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カリキュラム/第5章: プロンプト術/5-1 CLAUDE.md の書き方|Claude Code の脳を育てる

5-1 CLAUDE.md の書き方|Claude Code の脳を育てる

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プロジェクト固有の文脈を CLAUDE.md にまとめ、毎回の説明をゼロにする書き方を体系化。階層構造、章立てテンプレート、更新運用、ハマる NG パターンまで、実プロジェクト例つきで解説します。

5章: プロンプト術60分
酒井歩乃加
監修: 酒井歩乃加

フリーランス編集者・ライター / 元マイベスト編集ディレクター

平原尚樹
監修: 平原尚樹

株式会社BlueAI 代表取締役CEO / ソフトウェアエンジニア

このレッスンで身につくこと

このレッスンは、第 5 章「プロンプト術」の入口です。続く 5-2「効果的な指示のコツ」、5-3「Best of N パターン」と合わせた 3 部作の 土台 にあたります。

CLAUDE.md は Claude Code の "脳" を育てるファイル です。プロジェクトの前提・規約・コマンド・禁止事項を書いておけば、毎回の対話で「このプロジェクトは React で書かれていて、テストは vitest を使っていて……」と説明し直す必要がなくなります。Claude Code が セッション開始時に自動で読み込み 前提として動いてくれます。

ポイント

このレッスンのゴール

  • CLAUDE.md がどこに置かれ、いつ・どう読み込まれるかを説明できる
  • ある場合とない場合 の挙動差を具体的なシナリオで再現できる
  • 5 セクション構造(概要 / 規約 / ディレクトリ / コマンド / 禁止)でゼロから書ける
  • Web アプリ / Python / Go の 3 実例 をテンプレとして流用できる
  • 効果的な指示文の 7 原則 をプロンプトに即適用できる
  • Bad / Good 対比 5 セット を見て自分の悪癖を自覚できる
  • ==~/.claude/CLAUDE.md / プロジェクト / CLAUDE.local.md== の 3 層を使い分けられる

所要時間 — 約 60 分(手を動かしながらなら 90 分) 難易度 — ★★☆☆☆(第 1〜2 章を読み終えていれば OK)


CLAUDE.md とは何か — Claude Code の "脳" を育てる場所

CLAUDE.md は、プロジェクトルートに置くプレーンテキスト です。形式は Markdown。Claude Code はセッション開始時にコンテキストへ流し込みます。

README と違って、CLAUDE.md は 「人間」ではなく「AI」が読む前提 で書きます。同じ内容でも、箇条書き寄り・命令文寄り に書いたほうが効きます。

# CLAUDE.md(人間向け README とは違う書き方)

## プロジェクト
- 社内タスク管理ツール(React + TypeScript)

## 守ること
- 関数コンポーネントのみ。クラスコンポーネント禁止
- console.log を残してコミットしない
- コミットメッセージは日本語

## やってほしいこと
- テスト実行は `bun test`(npm 禁止)
- 新規ページは `app/routes/` に置く

見出しで構造化し、箇条書きで命令 する。これが基本フォームです。Claude Code は Markdown の見出しを「文脈の切れ目」として認識するため、構造化された方が 必要なときだけ正確に思い出してくれます

読み込みのタイミングと優先順位

CLAUDE.md は 以下の優先順位でマージ されます。

  1. ==~/.claude/CLAUDE.md== — 全プロジェクト共通のあなた個人の好み
  2. プロジェクトルート/CLAUDE.md — プロジェクト固有の規約(Git にコミット)
  3. プロジェクトルート/CLAUDE.local.md — そのマシン固有のローカル設定(.gitignore
  4. サブディレクトリ/CLAUDE.md — そのディレクトリ配下のみ追加で読まれる指示

全部が「上書き」ではなく「足し算」です。~/.claude/CLAUDE.md に「コミットは日本語」と書き、プロジェクトの CLAUDE.md に「コミットは英語」と書くと、Claude Code は 後から読んだプロジェクト側を優先 します。

ポイント

サブディレクトリ別の CLAUDE.md は 巨大モノレポで威力を発揮 します。apps/api-go/CLAUDE.md には Go の規約だけ、apps/web/CLAUDE.md には React の規約だけ書いておけば、Claude Code はそのディレクトリで作業を始めた瞬間に該当ファイルだけ読み込みます。

/init で雛形を自動生成

ゼロから書くのが大変なら、==/init== というスラッシュコマンドで雛形を生成できます。

cd ~/Documents/my-project
claude
> /init

/init は現在のディレクトリを再帰的に読み込み、package.json や README、ファイル構成から雛形を作ります。生成物はそのまま使わず、必ず手で加筆 してください。/init が拾えるのは "表面的な事実" だけ。暗黙ルール(「この関数はリファクタ予定」「このディレクトリは触らない」など)は人間が書き足します。


Before / After — CLAUDE.md がある場合・ない場合

抽象的に「便利です」と言われても腑に落ちないので、具体的なシナリオで比較します。

シナリオ A — ない場合

> ユーザー一覧ページにフィルター機能を足して と打つと、CLAUDE.md がない状態だと Claude Code は次のように動きます。

ユーザー一覧ページがどこにあるか確認します。

[Grep] "ユーザー一覧" を検索 → 3 ファイルヒット
[Read] app/users/page.tsx ... src/pages/UserList.tsx ...

これらのうち、どれが現在のユーザー一覧ページですか?
また、フィルターは A. クライアントサイド / B. サーバーサイド
のどちらで実装しますか?
使用フレームワークと UI ライブラリも教えてください。

このやり取りだけで往復 5 回 の質問応答が発生します。

シナリオ B — ある場合

同じプロジェクトに次の CLAUDE.md が置いてあるとします。

## プロジェクト
- B2B SaaS(顧客管理)/ React Router v7 / Go API(Cloud Run)

## ディレクトリ
- ユーザー機能: app/routes/users.tsx + app/components/user-*.tsx
- 旧コード src/ は移行中。新規実装は app/ のみ

## 規約
- 一覧フィルターは必ずサーバーサイド(page= / q= / sort=)
- データ取得は loader 内で safeApi
- 表示は @blueai/ui を優先

同じ指示を出すと、Claude Code は 質問ゼロ・往復 1 回app/routes/users.tsx を編集して完了します。30 秒の合意形成が 3 秒 になりました。

気づき

CLAUDE.md の本質は「説明を省く」ことではなく、「対話の往復を減らす」こと です。

往復が 5 回 → 1 回になると、1 回の作業時間が短縮されるだけでなく、1 日にこなせる試行錯誤の回数 が増えます。第 1 章で紹介した「試行回数の天井を 10 倍にする」というメカニズムが、CLAUDE.md でさらに加速します。

お金よりも「思考の連続性」のほうが大事 です。毎回プロジェクトの背景を説明していると、本来の仕事に集中できません。CLAUDE.md は 「ここに書いてあることは、もう説明したものとして扱ってください」 という、あなたから AI への契約書です。


CLAUDE.md の基本構造 — 5 セクションで覚える

何を書くか迷ったら、以下の 5 セクション に当てはめてみてください。だいたいのプロジェクトはこれで十分です。

セクション何を書くか目安行数
1. プロジェクト概要何のためのコード/技術スタック/業務上の目的5〜10
2. コーディング規約命名、フォーマット、書き方の暗黙ルール10〜20
3. ディレクトリ構造どこに何があるか/触っていい場所と触っちゃいけない場所5〜15
4. 依存とコマンドパッケージマネージャ/開発・テスト・デプロイの実行コマンド5〜10
5. 注意点・禁止事項やってはいけないこと/よくある勘違い5〜10

全部合わせて 30〜80 行 に収めるのが目安です。それを超えると Claude Code 側でも「結局どこが大事なのか」がボケ始めます。

loading diagram…

セクション 1 — プロジェクト概要

何のためのコードか を 1〜2 行で、技術スタックを 3〜4 行で。

## プロジェクト概要
- 中小企業向けの請求書発行 SaaS(個人事業主〜50 名規模が対象)
- Next.js 15(App Router)/ Hono on Cloudflare Workers
- DB: Cloudflare D1 / 認証: Better Auth

「中小企業向けの」「個人事業主が対象」 のような 業務文脈 を 1 行入れると、Claude Code が書くコードの言葉選び(UI 文言、エラーメッセージ)が一気に良くなります。

セクション 2 — コーディング規約

ESLint や Prettier ではカバーしきれない、プロジェクト固有の慣習 をここに。

## コーディング規約
- 関数は arrow function より function 宣言を優先
- React コンポーネントは named export
- TypeScript の any 禁止。unknown + 型ガードで対応
- console.log を残してコミットしない
- コメント・コミットメッセージは日本語、識別子は英語

「日本語コメント、英語識別子」 のような言語ルールは明示しないと、Claude Code がバラバラの方針で書いてきます。

セクション 3 — ディレクトリ構造

Claude Code が新規ファイル置き場で迷わない程度 に書きます。フルツリーは不要。

## ディレクトリ構造
- app/routes/ — ページ
- app/components/ — 共有コンポーネント
- app/lib/ — クライアント側ヘルパー
- db/schema.ts — Drizzle スキーマ(単一ソース)
- 触らない: dist/、build/、.wrangler/

「触っちゃいけない場所」を明記 するのは超重要です。Claude Code は気を抜くと build 成果物の中まで編集しようとします。

セクション 4 — 依存とコマンド

開発・テスト・ビルド・デプロイのコマンドを コピペで動く形 で。

## 依存とコマンド
- パッケージマネージャ: bun(npm/yarn 禁止)
- 開発: `bun dev` / テスト: `bun test`
- ビルド: `bun run build` / デプロイ: `bunx wrangler deploy`

「npm 禁止、bun を使う」 のように 代替品の禁止 をセットで書くと、無意識に npm を叩いてしまう事故を防げます。

セクション 5 — 注意点・禁止事項

「これをやられたら困る」 を箇条書きで。

## 注意点・禁止事項
- .env / .dev.vars は絶対にコミットしない
- DB マイグレーションは drizzle-kit 経由のみ(手書き SQL 禁止)
- 本番 D1 に直接クエリを流さない(必ず staging で検証)
- 古い `pages/` は廃止予定。新規実装は app/ のみ

禁止事項は「具体的な行為」で書く のがコツです。「セキュリティに注意」のような抽象表現は伝わりません。「.env をコミットしない」のように、実行可能なレベル まで具体化します。

ポイント

優先順位

時間がないなら セクション 4(コマンド)と 5(禁止事項) の 2 つだけでも書きましょう。Claude Code の挙動を 即座に変える 効果があります。


実例 1 — Web アプリ(Next.js + Tailwind)

ここから 3 つの実例を見ます。1 つ目は 個人開発の Web アプリ を想定したテンプレです。

# CLAUDE.md

## プロジェクト概要
- 日記投稿サービス「dailylog」
- Next.js 15(App Router)/ Tailwind v4 / Drizzle ORM / Neon
- 認証: Better Auth / ホスティング: Vercel

## ディレクトリ構造
- app/(auth)/ — login、signup
- app/(app)/ — dashboard、entries
- components/ — 共有 UI
- lib/ — db.ts、auth.ts
- 触らない: .next/、node_modules/

## コーディング規約
- Server Component を default、必要なときだけ "use client"
- フォーム送信は Server Actions(API Route は作らない)
- Tailwind の任意値(`w-[123px]`)は禁止
- アイコンは lucide-react

## 依存とコマンド
- パッケージマネージャ: pnpm
- 開発: `pnpm dev` / テスト: `pnpm test` / 型: `pnpm typecheck`
- DB マイグレ: `pnpm db:generate` → `pnpm db:push`

## 禁止事項
- .env.local は絶対にコミットしない
- DB スキーマ変更は drizzle-kit 経由のみ
- 本番 Neon の main ブランチに直接接続しない
- Server Actions の引数は必ず Zod でバリデーション

30 行で 5 セクション全部入り の良いサイズ感です。機能が増えるたびに微調整します。


実例 2 — Python データ分析プロジェクト

2 つ目は データ分析業務向け のテンプレ。Jupyter Notebook 中心で進めるプロジェクトを想定します。

# CLAUDE.md

## プロジェクト概要
- 月次の売上データ分析パイプライン
- 入力: Salesforce CSV / Shopify 注文ログ JSON
- 出力: 月次レポート(HTML + PDF)、BI 用 Parquet
- 言語: Python 3.12(pandas / polars / matplotlib)

## ディレクトリ構造
- data/raw/ — 元データ(読み取り専用、書き換え禁止)
- data/processed/ — 前処理済み(Parquet 形式)
- notebooks/ — 探索用 Jupyter Notebook
- src/ — 本番パイプライン(再現性重視)
- tests/ — pytest

## コーディング規約
- 探索は notebooks/、本番化したら src/ に移植
- カラム名は snake_case 統一(元が CamelCase でも揃える)
- マジックナンバー禁止。閾値は src/constants.py に集約
- 可視化は matplotlib のみ(seaborn / plotly は使わない)

## 依存とコマンド
- パッケージマネージャ: uv
- 環境構築: `uv sync`
- Jupyter 起動: `uv run jupyter lab`
- テスト: `uv run pytest`
- 型チェック: `uv run mypy src/`

## 注意点・禁止事項
- data/raw/ は絶対に書き換えない
- Notebook の出力セルはコミット前にクリア(nbstripout)
- 「動いた Notebook を src/ にそのまま貼る」は禁止。リファクタしてから
- pandas で for ループ多用しない。ベクトル化を優先

データ分析特有の落とし穴(出力セルのコミットraw データの汚染)が 禁止事項に明示 されている点に注目してください。これで Claude Code が「探索 Notebook をそのまま本番コード化」してしまう事故を防げます。


実例 3 — Go API プロジェクト

3 つ目は バックエンド のテンプレ。チームで開発する API を想定します。

# CLAUDE.md

## プロジェクト概要
- B2B SaaS の API サーバー(給与計算サービス)
- 言語: Go 1.25 / DB: TiDB(MySQL 互換)/ デプロイ: Cloud Run

## アーキテクチャ(3 層)
- internal/http/ — ハンドラ
- internal/service/ — 業務ロジック
- internal/repository/ — DB アクセス(sqlc 生成)

## ディレクトリ構造
- internal/repository/sqlcgen/ — 自動生成、手で書き換え禁止
- migrations/ — Atlas マイグレーション
- sql/queries/ — sqlc 用 SQL 定義
- openapi/openapi.yaml — API 仕様(単一ソース)

## 規約
- エラーは fmt.Errorf("...: %w", err) で wrap
- 関数名は GetXxx ではなく FetchXxx
- テストは table-driven、t.Run でサブテスト名を必ずつける

## コマンド
- 開発: `make dev-go`
- テスト: `go test ./...`
- マイグレ生成: `atlas migrate diff --env local`
- sqlc 再生成: `make sqlc-generate`
- OpenAPI から型生成: `make openapi-generate`

## API 変更時のチェックリスト(必ず守る)
1. openapi/openapi.yaml を更新
2. sql/queries/*.sql を更新
3. `make sqlc-generate` と `make openapi-generate` を実行
4. changelog.md にエントリ追加
5. テスト追加

## 禁止事項
- sqlcgen/ を手で編集(必ず sqlc 経由)
- マルチテナントのクエリで org_id を省略
- 本番 DB への直接 ALTER(Atlas 経由のみ)
- ログに個人情報を出力

「API 変更時のチェックリスト」 というセクションが特徴的です。これは「コードを書くときの規約」ではなく 「タスクを進めるときの手順」 であり、CLAUDE.md に書くことで Claude Code が 手順を自分でチェックしながら作業 してくれるようになります。

気づき

CLAUDE.md は「規約」だけでなく、「手順」を書く場所 でもあります。「マイグレーションを書いたら必ず changelog を更新」「PR を出したら CI が通るか確認」のような プロジェクト固有のワークフロー を書いておくと、Claude Code が 手順抜けを自分で防いで くれます。


効果的な指示文の 7 原則

CLAUDE.md がしっかり書けていても、毎回のプロンプトが雑だと精度は落ちます。==CLAUDE.md = 常設の前提プロンプト = 今回のタスク という役割分担です。次の 5-2 でテクニックを深掘りする前の、指針== として 7 原則を頭に入れてください。

原則 1 — 完成形を箇条書きで描写 — 「ユーザー管理画面を作って」だけだと Claude のセンス任せ。完成形を 5 行で描写すると一気に精度が上がります。「画像の代わりにテキストで画像を描く」のがコツ。

原則 2 — 制約と禁止事項を冒頭で — 「外部ライブラリ追加禁止」「既存の useToast() を使う」のような制約は プロンプトの冒頭で 宣言。「コードを書いたあとで実は……」では遅いです。

原則 3 — 出力フォーマットを指定 — 「Markdown で」「箇条書きで 5 行以内」「JSON で { "title": "", "items": [] } の形」のように形を決めると結果がブレません。

原則 4 — 既存ファイルを「お手本」として参照 — ゼロから書くより、「app/routes/users.tsx と同じパターンで」 と既存コードを指差すほうが精度は飛躍的に上がります。

原則 5 — タスクを段階に分ける — 大きすぎるタスクは 3〜5 ステップに分割 し、各ステップごとに動作確認。「最後にまとめてエラー祭り」を防げます。

原則 6 — 失敗時のリカバリーを伝える — 「テストが落ちたら止まって質問して」「ビルドが通らなかったら直前の状態に戻して」など、失敗時の挙動 を先回りで指定。

原則 7 — 確認ステップを挟む — 「実装する前に、まず設計案を 3 行で説明して」と挟むと方向性のすり合わせが楽になります。Claude Code は出力前に止まり、OK を出してから書き始めます。

ポイント

7 原則のうち、まず原則 1(完成形描写)と原則 4(お手本参照) の 2 つを徹底するだけでもプロンプト品質は 2 倍くらいに上がります。慣れてきたら残りを足していきましょう。


プロンプト失敗パターン — Bad / Good 対比 5 セット

「悪い例 → 良い例」 を 5 セット並べます。自分のプロンプトと見比べてみてください。

セット 1 — 「いい感じに」族

Bad
ヘッダーをいい感じにして

「いい感じ」は人によって違います。Claude Code は「最大公約数的に当たり障りのないもの」を返します。

Good
ヘッダーのデザインを以下のように調整して。
- 高さ 64px → 56px
- ロゴと右側ナビの間隔を均等に
- スクロール時に背景を白から半透明グレーに
- モバイルではナビをハンバーガーに畳む

「いい感じ」を 4 つの具体行動に分解。ほぼ思った通りに出てきます。

セット 2 — 「全部やって」族

Bad
ECサイトを作って

スコープが広すぎて、Claude Code は薄っぺらい雛形を返します。

Good
ECサイトの「商品一覧ページ」だけ作って。
- 商品データは public/products.json をモック
- カート機能は今回スキップ
- Tailwind、グリッド 3 列、商品ごとに画像 / 名前 / 価格 / ボタン

次は商品詳細ページに進む予定。

「今回のスコープ」と「次のステップ」 を分けると、今やるべきことに集中できます。

セット 3 — 「直して」族

Bad
バグ直して

症状・再現手順・期待動作、何も書いていません。

Good
ログイン画面のバグを直して。
症状: メールに大文字を含めるとログイン失敗
再現: test@Example.com で signup → test@example.com でログイン
期待: 大文字小文字を区別せずログイン成功
推測: signup 時に toLowerCase() し忘れ
ファイル: app/routes/login.tsx、lib/auth.ts

「症状 / 再現 / 期待 / 推測 / 関連ファイル」 の 5 点セットで、原因特定が劇的に速くなります。

セット 4 — 「ファイル全部読んで」族

Bad
プロジェクト全体を見て、改善点を 100 個挙げて

コンテキスト窓を食い尽くす上、本当に効くものは数個。トークンの無駄遣いです。

Good
パフォーマンス観点で、重そうなページを 1 つ選んで、
改善案を上位 5 つに絞って提案して。
候補: app/routes/dashboard.tsx、app/routes/reports.tsx

スコープを絞り、出力数も絞る。Claude Code が 自分でランキング してくれます。

セット 5 — 「もうちょっと」族

Bad
もうちょっと良くして

「良く」が何を意味するか不明。前回との差分 を指示しないと、何を変えていいか分かりません。

Good
さっきのコードに対して、以下 3 点だけ修正して。
1. forEach を for...of に置き換え
2. エラーメッセージを日本語に
3. 関数名 fetchUsers → loadUserList
それ以外は変更しないで。

「変えるところ」と「変えないところ」 を明示すれば、意図しない差分が混入しません。

気づき

5 セットの Bad に共通するのは、「言わなくても分かるはず」という甘え です。

Claude Code は あなたの頭の中を読めない。CLAUDE.md で「常設の前提」を、プロンプトで「今回の具体」を、両方で伝えてはじめて、思い通りの結果が返ってきます。


CLAUDE.md と Sub-agent への指示の使い分け

第 7-8 章で扱う Sub-agent(子エージェント)の話を先取りします。Claude Code は Task ツール でサブタスクを別エージェントに丸投げできます。たとえば「リファクタ案を 3 つ調査」のような 探索系 を、メインのコンテキストを汚さず並列実行できます。

観点CLAUDE.mdSub-agent プロンプト
適用範囲プロジェクト全体・全セッションその 1 回のタスクのみ
寿命長期(プロジェクトと同じ)1 回の実行で終わり
適した内容規約・ディレクトリ・禁止探索方針・出力フォーマット
更新頻度プロジェクト変更時のみ毎回

「毎回違うことは Sub-agent に」「毎回同じことは CLAUDE.md に」 というシンプルな線引きで迷いません。「コミットメッセージは日本語」は CLAUDE.md に、「今日のリリースノート用に過去 1 週間のコミットを英訳」は Sub-agent に。


CLAUDE.md のメンテナンス — いつ・どう更新するか

CLAUDE.md は 書いたら終わり ではなく、プロジェクトが進化するたびに 古くなっていくドキュメント です。次のような場面では必ず見直します。

  • 新しい技術スタックを導入 したとき(Tailwind を追加、ORM 切替)
  • コマンドが変わった とき(npm → bun、テストフレームワーク変更)
  • ディレクトリ構造を変えた とき(pages → app に移行、モノレポ化)
  • Claude Code が同じ間違いを 2 回 したとき(その挙動を禁止事項に追加)

特に最後の 「2 回間違えたら CLAUDE.md に追記」 は強力な習慣です。1 回の間違いは事故、2 回はパターン。パターンを CLAUDE.md で塞ぐ と、Claude Code が学習したかのように振る舞います。

更新は Claude Code 自身に頼める のが面白いところです。

最近の作業で、CLAUDE.md に書いておいたほうが良さそうな
ルールや知見はある? 5 つ以内で挙げて、追記案を作って。

これを 週 1 回 投げると、Claude Code が直近の会話を振り返って改善案を出してくれます。AI に AI 用の取扱説明書を書かせる というメタな運用です。

ポイント

CLAUDE.md の長さ目安は 30〜80 行。100 行を超えたら棚卸ししましょう。「無くても困らない記述」を消すだけで、Claude Code のレスポンス品質が 逆に上がる ことがあります。


チームでの CLAUDE.md 運用 — 3 層の使い分け

ここまでは個人開発を前提に書きましたが、チーム開発 ではもう一歩踏み込んだ運用が必要です。

ファイル配置スコープGit 管理
==~/.claude/CLAUDE.md==ホームディレクトリ全プロジェクト共通個人 dotfiles
==CLAUDE.md==リポジトリのルートチーム全員コミット
==CLAUDE.local.md==リポジトリのルートこのマシンだけ.gitignore

==~/.claude/CLAUDE.md== にはあなた個人の好み(「コミットメッセージは日本語」など)を書きます。複数プロジェクトで共有したいパーソナル設定です。

==CLAUDE.md はリポジトリにコミットして チーム全員で共有== します。「うちのチームではこういう書き方をする」というルール集です。

==CLAUDE.local.md はあなたのマシンだけに置く 実験的な設定 や、ローカル DB の接続文字列のような 共有したくない情報== を入れます。

チーム CLAUDE.md を書くコツ

個人用と違って、「誰が読んでも同じように動く」記述 が必要です。

  • 「私が好き」ではなく「チームで合意した」 ルールだけ書く
  • 背景理由を 1 行添える(「Tailwind v4 採用は Vite Plugin が安定したため」)
  • 変更履歴を末尾に残す と後から追える

GitHub の PR テンプレに ==- [ ] CLAUDE.md の更新は必要か確認した== の 1 行を入れておくと、ドキュメントが腐りません。

ポイント

3 層を組み合わせる例

複数のクライアント案件を抱えているとします。

  • ~/.claude/CLAUDE.md — 「日本語コメント、bun を優先、絵文字なし」
  • client-a/CLAUDE.md — 「React Router v7、Tailwind v4、@blueai/ui を使う」
  • client-a/CLAUDE.local.md — 「ローカル DB は postgres://localhost

3 つが 足し算 され、Claude Code には完全な前提が伝わります。


CLAUDE.md にまつわるよくある質問

Q1. CLAUDE.md は必須ですか? — 必須ではないですが、本格的に使うなら 100% 書いたほうがいいです。書かないと毎回同じ説明を繰り返すことになり、トークン代と時間 が両方かかります。

Q2. README.md と何が違う? — README は人間向け、CLAUDE.md は AI 向けです。README は説明調(「○○を実現するためのものです」)、CLAUDE.md は命令調(「○○を使ってください」)。両方を持っていて構いません。

Q3. 書く順番に決まりは? — Claude Code は上から順に読むので、重要な禁止事項は冒頭近く に置くのが効果的です。「.env をコミットしない」のような絶対ルールはファイルの先頭付近に書きましょう。

Q4. CLAUDE.md だけで挙動を完全に制御できる? — できません。CLAUDE.md は強い前提を作りますが、絶対の命令ではありません。プロンプト側で上書きすれば Claude Code はプロンプトに従います。絶対に守らせたいルールは CI のテストgit hooks で機械的に弾く層も併用してください。

Q5. CLAUDE.md を書いても効いてないように見える — 3 つの可能性があります。読み込まれていない(ファイル名・配置を確認)、書き方が曖昧(「丁寧に」ではなく「○○を使う」と命令形に)、プロンプト側で打ち消されている(プロンプトと CLAUDE.md の矛盾を確認)。


まとめ

このレッスンで身につけた知識を 7 点で振り返ります。

  1. CLAUDE.md は Claude Code の "脳" を育てるファイル。プロジェクトの前提・規約・コマンドを集約する場所
  2. ==~/.claude/ / プロジェクト / CLAUDE.local.md の 3 層が 足し算== でマージされる
  3. 5 セクション構造(概要 / 規約 / ディレクトリ / コマンド / 禁止)で書くと迷わない
  4. Web アプリ / Python データ分析 / Go API の 3 実例を、ベースに使えばすぐ始められる
  5. CLAUDE.md は「常設の前提」、プロンプトは「今回の具体」== — 両方で補完し合う
  6. プロンプトの失敗パターン 5 つ(「いい感じに」「全部やって」「直して」「全部読んで」「もうちょっと」)には、必ず具体化で対処
  7. CLAUDE.md は 書きっぱなしにせず、週 1 で見直し。Claude Code が 2 回間違えたパターンは即追記
章末演習

章末演習 — 30 分で手を動かして「自分ごと」に落とし込みましょう。

  1. 今あなたが触っているプロジェクトclaude を起動し、/init を実行して CLAUDE.md の雛形を生成する
  2. 雛形を見て、足りないと感じた項目を 5 つ 加筆する(特にセクション 4「コマンド」と 5「禁止事項」を重点的に)
  3. CLAUDE.md を書く前に過去 1 週間で Claude Code に出した指示を 3 つ思い出し、「もし CLAUDE.md にあれだけ書いておけば省略できた説明」 を抽出する
  4. 抽出した内容を CLAUDE.md に追加して、同じ指示をもう一度試す。トークン消費と往復回数がどれくらい減ったか体感する
  5. 余裕があれば ~/.claude/CLAUDE.md も作って、あなた個人の好み(言語、コミット作法、好きなライブラリ)を 5 行で書く

<Quiz question="CLAUDE.md について正しい説明はどれですか?" options={["Claude Code がセッション開始時に自動で読み込み、プロジェクト全体の前提として扱う","Claude Code の API キーを保存するためのファイルで、必ず暗号化が必要","Claude Code に質問するたびに手動で読み込ませる必要がある"]} answer={0} />

<Quiz question="CLAUDE.md の運用で適切でないものはどれですか?" options={["本番 API キーや .env の中身を直接書く","Claude Code が 2 回同じ間違いをしたら、その挙動を禁止事項に追加する","個人の好みは ~/.claude/CLAUDE.md、チーム共通はリポジトリの CLAUDE.md に分ける"]} answer={0} />


次のレッスン 5-2: 効果的な指示のコツ では、CLAUDE.md で土台を整えた上で、毎回のプロンプト を磨くテクニックを 4 つのテクニックに分けて深掘りします。