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安全と会社での利用

ランサムウェア対策⁠|中小企業が順番にやること、感染した最初の1時間、届け出先

要点この記事の答え
  1. 入口はVPN機器で、被害企業の約6割が中小企業です。
  2. 対策は、更新、認証、権限、オフラインの備えの順です。
  3. 感染したら、切り離して電源は落とさず警察へ通報します。
ランサムウェア対策は、VPN機器の更新、多要素認証、権限の最小化、オフラインのバックアップの順に進め、感染したら電源は落とさず切り離して警察に通報する。

ランサムウェア対策は、入口をふさぐ、権限を絞る、戻せるバックアップを持つ、の順に進めます。 警察庁によると、近年は、VPN機器など、インターネットに出ている部分から侵入する手口が多くを占めます。被害企業へのアンケートでは、侵入経路はVPN機器が約5割でした(令和8年上半期)。つまり、最初に直すのは、メールの添付ファイルより、VPN機器とパスワードです。

感染してしまったら、最初にすることは、感染した機器をネットワークから切り離すことです。警察庁は、ログが消えることがあるので、電源は落とさないよう呼びかけています。そのうえで、警察に通報し、相談します。この記事では、ランサムウェアとは何か、中小企業がどう狙われているか、対策の順番、最初の1時間、届け出先を、公的機関の資料にもとづいて整理します。

内容は、2026年10月23日に、IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026、IPAのランサムウェア被害から学ぶ教訓集と10大脅威 2026 解説書[組織編]、警察庁の令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等についてと令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について、警察庁のランサムウェア被害防止対策と通報等の窓口、IPAの企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口、JPCERT/CCの侵入型ランサムウェア攻撃FAQと照らし合わせました。数字には、データの年を付けています。

ランサムウェアとは

警察庁の資料では、ランサムウェアは、端末などに保存されているデータを暗号化して使えない状態にしたうえで、そのデータを元に戻す対価(金銭または暗号資産)を要求する不正プログラムとされています。近年は、データを盗んだうえで、「払わなければ公開する」と要求する、二重の脅迫が被害の多くを占めます。暗号化をせず、盗んだデータの公開を予告して要求する手口もあります。

IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026(2026年1月29日公開)では、組織向けの脅威の1位が「ランサム攻撃による被害」でした。2016年に初めて選ばれてから、11年連続の選出です。

中小企業は、どう狙われているか

警察庁の資料から、次の数字が読み取れます。

項目数字年のデータ
項目警察庁に報告された被害の件数数字226件年のデータ令和7年(2025年)の1年間
項目同じく件数数字123件(半期として、統計を取り始めた令和2年下半期以降で最多)年のデータ令和8年(2026年)上半期
項目被害企業のうち中小企業の割合数字約6割年のデータ令和7年、令和8年上半期のどちらも
項目侵入経路(被害組織へのアンケート)数字VPN機器が約5割年のデータ令和8年上半期
項目復旧に総額1,000万円以上かかった組織の割合数字5割を超える(令和7年)、6割(令和8年上半期)年のデータ令和7年、令和8年上半期
項目1か月未満で復旧した組織の割合数字5割強(令和7年)、5割弱(令和8年上半期)年のデータ令和7年、令和8年上半期
項目サイバー攻撃を想定した業務継続計画(BCP)を決めていた被害組織数字約18%年のデータ令和7年

件数は、警察庁に報告があった分です。報告されなかった被害は入っていません。

費用と期間の2つを、警察庁の統計の回答数から割合にすると、次の通りです。

図 1被害組織のうち、調査と復旧の費用が1,000万円以上だった割合と、1か月未満で復旧した割合回答のうち、費用が1,000万円以上だった組織は52%から60%になり、1か月未満で復旧できた組織は56%から48%になりました。
費用が1,000万円以上1か月未満で復旧
令和7年令和8年上半期52%千万円以上60%千万円以上56%1か月未満48%1か月未満令和7年令和8年上半期52%千万円以上60%千万円以上56%1か月未満48%1か月未満令和7年令和8年上半期52%千万円以上60%千万円以上56%1か月未満48%1か月未満
出典 警察庁の令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等についての統計編144頁と145頁(令和7年の数も載っています)と、令和7年の同じ資料の統計編126頁。被害組織へのアンケートの回答数で、2026年10月24日に読みました。割合は、図の回答数から出しました。1,000万円以上は「1,000万円以上5,000万円未満」「5,000万円以上1億円未満」「1億円以上」の合計、1か月未満は「即時〜1週間未満」と「1週間以上1か月未満」の合計を、その年の有効回答の数で割っています。費用は警察庁の統計の「調査・復旧費用の総額」です。令和7年は1年分、令和8年上半期は半年分で、答えた組織も違うため、同じ組織の変化ではなく、それぞれの回答の割合を並べたものです。令和8年上半期は回答が少ないので、数ポイントの差は大きく読まないでください。
数値を表で見る
項目令和7年令和8年上半期
調査と復旧の費用が1,000万円以上46件/89件(52%)21件/35件(60%)
1か月未満で復旧した60件/107件(56%)23件/48件(48%)

攻撃の流れも、警察庁の資料に書かれています。攻撃者は、直っていない脆弱性や、漏れたパスワードを使って入り込みます。次に、管理者の権限を奪い、セキュリティの機能を止めようとしながら、ネットワークの中を探して、大事なデータとバックアップを探します。データを外へ持ち出したあとで、暗号化を実行し、最後に脅迫状(ランサムノート)を置きます。令和7年の資料は、復旧を妨げるために、バックアップも一緒に暗号化される場合が多い、と書いています。

つまり、中小企業だから狙われないのではありません。むしろ約6割が中小企業です。攻撃者は、入りやすい「隙」のある会社を探します。

対策は、この順番で

警察庁は、基本的なセキュリティ対策を続けることが最も重要で、特に、主な入口であるVPN機器などは、すばやい対応が必要だとしています。警察庁のランサムウェア被害防止対策の項目を、効果の出やすい順に並べ直しました。順番は、当サイトの考えです。

順対策公的機関の説明
順1対策VPN機器やOSの更新公的機関の説明更新ファイルやパッチが出たら、すばやく当てる
順2対策パスワードと多要素認証公的機関の説明初期パスワードや簡単な文字列を避け、多要素認証や、IPアドレスによるアクセス制限を組み合わせる
順3対策権限の最小化公的機関の説明アカウントの権限とアクセスできる範囲を、必要最小限にする。特に管理者権限は絞る
順4対策戻せるバックアップ公的機関の説明こまめに取り、ネットワークから切り離してオフラインで保存する
順5対策EDRなどの検知公的機関の説明侵入の前ぶれや不審な動きを見つけて止める。入れるだけでなく、最新に保ち、運用する
順6対策ログの保存と、訓練公的機関の説明調査の手がかりになる。連絡や復旧の手順を訓練で確かめる

1 VPN機器とOSの更新

いちばん先にやるのは、会社が使っているVPN機器とルーターの、型番と更新の状況の確認です。外から会社のネットワークに入る口は、VPN機器だけとは限りません。リモートデスクトップも、インターネットに出していれば同じです。更新できない古い機器は、取り替えを考えます。

2 パスワードと多要素認証

警察庁は、パスワードが漏れたり、簡単だったりして、ネットワーク機器やリモートデスクトップの認証を破られて入られる事例が多数ある、と書いています。管理者のアカウントと、外から入れるアカウントから、多要素認証を入れます。

3 権限の最小化

誰かのアカウントが乗っ取られても、広がりを小さくするための対策です。全員が管理者権限を持っている会社は、見直します。インターネットに出しているサーバーや機器は、乗っ取られた場合に備えて、アクセスできる範囲を限ります。

4 バックアップは、オフラインで、一度は戻してみる

警察庁は、バックアップのデータまで暗号化される事例が多数ある、と書いています。バックアップは、ネットワークから切り離して、オフラインで保存することを勧めています。なお警察庁の資料には、実際の被害で、日ごろの運用の問題から、バックアップからの復旧がうまくいかない例もある、とあります。

取っているだけでなく、一度は別の場所へ戻してみて、初めて「戻せる」と言えます。その進め方は、次の記事に書いています。

関連記事安全と会社での利用ひとり情シスが今週やる5つ|版・バックアップ・アカウント・AIの決まり・連絡先ひとり情シスが今週やる5つ(PHPとOSの版、戻せるバックアップ、共有アカウントとMFA、生成AIの決まり、緊急連絡先)を、確かめ方つきで整理。JPCERT/CCとIPAの窓口、Claude Codeで読み取りだけの棚卸しをする方法も。

切り離す方法のほかに、書き換えられない保存(WORM)という方法もあります。IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](2026年3月)は、WORMを、一度書き込んだデータの変更や削除をできなくし、読み取りだけはできる機能と説明しています。これを備えた保存先を使うと、データの改ざんや消失を防げるとしています。また、バックアップから戻す訓練をすることも、有効としています。製品ごとの機能は、提供元の説明で確かめてください。

5 EDRなどの検知

警察庁は、ウイルス対策ソフト、EDR、ネットワークの監視製品などの導入が有効だとし、もし入られても、不審な動きを見つけて止めれば、暗号化や情報の持ち出しを防げる、としています。ただし、導入するだけでなく、最新に保ち、運用することが重要とされています。IPAの教訓集の目次にも、「EDR導入と定期ログ監査」が挙がっています。

費用の面で入れにくい場合は、1から4を先にやり、検知はその次に考えます。これは当サイトの考えで、警察庁やIPAの資料が定めた順番ではありません。

感染したら、最初の1時間にすること

次の流れは、警察庁とJPCERT/CCの資料の項目を、当サイトが並べたものです。「1時間以内に」という期限は、どの資料にも書かれていません。被害の状況によって、順番や中身は変わります。

  1. 感染した機器を、ネットワークから切り離します。 LANケーブルを抜く、無線をオフにする、などです。警察庁は、調査に必要なログが消えることがあるので、パソコンやネットワーク機器の電源は落とさないでください、としています
  2. バックアップを守ります。 JPCERT/CCのFAQは、さらなる被害を防ぐため、バックアップの保護を優先するとしています。自動のバックアップが、元のバックアップを上書きするおそれにも注意が必要です
  3. 対応の体制をつくります。 判断する人と連絡の窓口を決めます。JPCERT/CCは、社外からの問い合わせの窓口や、広報の体制も考えるよう書いています
  4. 警察に通報し、相談します。 警察庁は、初動の対応の支援や、復号ツールの案内ができる場合がある、としています
  5. 管理者のパスワードを変えます。 JPCERT/CCは、管理者アカウントを握られた可能性にも触れ、パスワードの変更と設定の確認を挙げています。警察庁も、攻撃者にアクセスされたおそれのある機器のパスワードを、すぐに変えるよう書いています
  6. 復旧の前に、侵入経路をふさぎます。 JPCERT/CCは、考えられる侵入経路をすべてふさぐことを求めています。同じ経路から、再び被害に遭うおそれがあるためです

身代金について、JPCERT/CCのFAQは「身代金の支払いは行うべきではありません」と書いています。警察も、犯罪グループなどの活動資金になることが心配されること、暗号化されたデータを元に戻せる保証はないことを、被害者に説明しているとしています。

電源についての指示は、資料によって書き方が違います。警察庁は、電源を落とさないよう書いています。JPCERT/CCのFAQには、電源についての指示は見当たりません。迷ったら、通報のときに警察の指示を聞いてください。

どこに届けるか

窓口内容
窓口警察内容最寄りの警察署、またはサイバー犯罪相談窓口。オンラインでは、サイバー事案に関する通報等のオンライン受付窓口があります。人命に関わる緊急の事案は110番です
窓口JPCERT/⁠CC内容インシデント報告をWebフォームかメールで受け付けます。電話は原則として受け付けていません
窓口IPA内容会社や組織は、企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口です。メールで受け付け(cs-⁠support@ipa.go.jp)、事案の調査や解析は行いません。個人向けの情報セキュリティ安心相談窓口は、会社や組織には別の窓口を案内しています。届出のページもあります

警察庁のランサムウェア被害防止対策のよくある質問には、次の回答があります。

  • 通報しても、警察から被害の公表を求めることはありません。被害の情報の秘密は守るとしています
  • 警察は、復旧作業や業務の継続に最大限配慮するとしています。発生の直後は、ログの保存だけを頼み、あとで詳しく聞く場合があります
  • 提供を頼む情報の例は、ランサムノート、通信ログ、ディスクイメージ、メモリダンプ、システム構成図です
  • 大した被害がなくても、犯人につながる手がかりがあるかもしれないので、情報提供を頼んでいます

復号ツールについては、「No More Ransom」のWebサイトに、一部のランサムウェア向けのツールが公開されています。ただし、すべてに対応しているわけではなく、暗号化されたファイルをすべて戻せるとも限りません。警察庁は、令和7年7月に、Phobos/8Base向けの復号ツールを公表し、警察に届け出ていない人も使える、としています。

当サイトの無料ツールで、外から見える部分を確かめる

自社のWebサイトを、外から見える範囲で確かめるなら、サイトのPHPとヘッダーを確かめる無料ツールが使えます。PHPの版の表示とセキュリティヘッダーを、通常のGETを1回送るだけで確かめます。VPN機器や社内のネットワークは確かめられません。ランサムウェアの対策の代わりにはなりません。

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PHPなどの更新と、ひとり情シスの1週間の進め方は、次の記事にあります。

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よくある質問

ランサムウェアに感染したら、最初に何をしますか?

感染した機器をネットワークから切り離します。警察庁は、ログが消えることがあるので電源は落とさないよう求めています。そのあと警察に通報して相談し、バックアップを守り、管理者のパスワードを変えます。

身代金は払ってもよいですか?

JPCERT/CCのFAQは、身代金の支払いは行うべきではないとしています。警察も、犯罪グループなどの活動資金になることが心配されることと、データが戻る保証はないことを説明しています。

中小企業でも狙われますか?

狙われます。警察庁の資料では、令和7年も令和8年上半期も、被害企業の約6割が中小企業でした。侵入経路は、VPN機器が約5割です(令和8年上半期)。

バックアップがあれば安心ですか?

安心とは言えません。警察庁は、バックアップのデータまで暗号化される事例が多数あるとし、ネットワークから切り離して、オフラインで保存することを勧めています。一度は戻してみて、戻せるかを確かめます。

どこに届ければよいですか?

最寄りの警察署かサイバー犯罪相談窓口、またはオンラインの通報窓口です。JPCERT/CCのインシデント報告と、IPAの企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口にも相談できます。